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インタビュー記事掲載 Fashion JapanTwo

2013年4月14日

昨年秋に受けたインタビューがFashion JapanTwoに掲載されました。

海外向けのサイトなので、英文です。

私の頂いた日本語原稿を掲載します。もしろん英文OKな方は直接お読みください♪

口語体表現で、親しみやすいカタチにまとめてくださいました。

ちょっと、いや、だいぶ偉そうではずかしいですし、かなり長いですが・・・。

ご興味あればお読みください!

http://fashion.japantwo.com/

http://fashion.japantwo.com/2013/03/22/331/

INTERVIEW  Vol.1

メイクアップアーティスト 五木田亞樹さん

「うまくなくていい、強さとか存在みたいなものがある作品を作りたい。」そう語ってくれたメイクアップアーティストの五木田亞樹さん。メイクをアートとしてとらえ、様々な作品を創作されている。今回のインタビューではメイクの道を志すまでの道のりや作品にかける熱い思いを伺った。

 

■学生時代のお話を聞かせてください。

学生の時に演劇をやっていました。たぶん昔から何かを表現したかったんだと思うんです。ただ、何を手段にしていいかわからなくて、最初に見つけたのが演劇でした。それで学生の時はそこに入って仲間と舞台づくりに没頭しました。それから学校を卒業して、一緒にやっていた仲間と劇団を立ち上げたんです。みんな仕事をしながらですけど、数回公演をやりました。最後の公演で初めて主役をやることになって、自分にとってそれはすごく嬉しかったはずなのにやっていたらとても孤独な気持ちになってしまったんです。考えてみたら、自分の出番ばかりだからみんなと楽しく交流する時間が全然なくて、私は演じる喜びよりみんなとの時間が大事だったのかな? あれ??と思って。

この表現が本当に自分にとって最高なのかって疑問に思ってしまったんです。それから、なんとなく自分の中でもう芝居は良いかなって、感じはじめました。

 

■その後、メイクの道に進んだのはなぜですか?

最後の公演のころに、たまたま、友人の親友のお母様である美容家小林照子先生のメイク教室に誘われて通い始めたんです。

そのとき、今後の人生を考えた時にメイクができたら良いのかもしれないって思ったんです。もちろん初心者向けの教室だから技術的なところはまだまだだったんですけど、そのあと偶然知り合いの紹介で簡単なメイクの仕事を頂くようになって。でも、自分でもこの技術じゃ無理だっていうのはわかっていたから、もっと勉強しなきゃという気持ちがすごくありました。そんな時に、小林照子先生から、先生が学校長をされているメイク学校のスタッフにならないかって声をかけていただいたんです。ただそれはメイクではなくて就職担当という形でした。正直興味はなかったんですけど、何かチャンスがあるんじゃないかという思いもあり、スタッフになることを決めました。

スタッフになってからは、就職担当の仕事をしながら学校の卒業生でもう少しメイクの勉強がしたい人たちが残るクラスになんとか入れてもらえることになったんです。その後も、私がメイクの仕事がしたいってしつこく(笑)言っていたら、じゃあ、私が指導しましょうって、当時、技術責任者だったメイクアップアーティストで美術家の鈴木寅二啓之先生がおっしゃってくださったんです。すごく嬉しかった! それで、学校にいる間は時間を作って、友人たちにモデルを頼んで協力してもらいながら、4,5ヶ月の間に100回近く練習しました。最後は先生の前でメイクの模擬授業をやる試験でした。何とか、それに受かって。ようやくプロとして授業で教えられることになったんですけど、ここからが地獄でしたね。

 

 

■地獄、ですか?

私は本当にスタートが遅かったし、もすごく不器用なんです。学生の時の演劇もそうですけど、パッとやってできるようなタイプではなくて。がんばっても抜擢されないみたいな流れが、何をやってもあったんですね。メイクの時もやっぱりそういう壁にぶち当たりまして…。ある程度のレベルまでは来たけど、そこからがなかなか伸びなかったんです。とにかくやってみようと思って色んな物を作ったり絵を描いたりしました。その当時はすごく苦しくて息切れしながら、どうして自分はメイクがうまくならないんだろう、うまくなりたいっていう思いとの葛藤が続いていましたね。

そんなとき、さらに腰を悪くしてしまって。もう仕事を休まざるを得なくなってしまったんです。でも、やっぱり休んでいて動けなくてもメイクがしたいと思って。せっかく今までやってきたから、もうちょっとでうまくなるかもしれないじゃないですか。でも、動けないのでとりあえず絵を描いてみようってイラストを描き始めたんです。そしたら、ちょっとそれが楽しくなってきて、今までとちょっと違う自分が出てきたような感じがあったんです。そんなこともあって、休養中はずっと絵を描いて過ごしていましたね。

結局、3か月くらい休養して久々に仕事場へ戻ってメイクの研修に参加したんです。そしたら、その日にやったメイクの仕上がりがすごく良かったんです。寅二先生からも「五木田さんは大丈夫ですよ。このメイクは一生に一回出せるか出せないかで、出せない人もいる。出せるってことは可能性がある。だから、きっとあなたは大丈夫。」っておっしゃってくださって。これが大きな支えとなり、転換点(または“ターニングポイント”)になりました。

そのあと復帰してからも新たな技術の壁にぶつかり苦しい時期もありましたが、2年、3年くらいでフリーになって学校を離れました。今は外部講師という形で年に何回か授業をしています。その後は2007年に教え子でもあり、学校でも一緒に仕事をやっていたメイクアップアーティストの大橋絵美と「ダリア」というアートプロジェクトを立ち上げました。私が学校を離れる時に、彼女が「一緒に何かやりましょう」って可愛い手紙に書いてくれたんです。

お互い年齢的にもかなり離れているんですけど、一緒に仕事をしていると感性で遊べる気がして。私も彼女と一緒に何かしたいと強く思いました。「ダリア」はふたりのおままごとの場です。コンセプトとかメイクだけでなくて作品の物語・作品の置き方見せ方もこだわっています。このプロジェクトは二人のメイクという表現から始まったけれど、ただ女性がメイクをしてきれいになるっていうことではなく、それを超えて顔から、物語が始まって広がった自由な世界表現をしています。

 

■作品を作るうえで大切にしているポリシーはありますか?

作品づくりは、誤解のない言い方をすれば「遊び」なんですよ。真剣な。遊んでいるからと言って妥協しているわけではなくて。真剣な遊びだからこそ純粋な喜びがあって、それによって自分も優しくなれたりとか強くなれたりとか。そして、真剣に遊ぶんですけど、やっぱり作った作品に責任は持ちたいんです。でも、作っていて分からなくなっちゃうときもあるんですね。どこにいって良いかわからないみたいな。その時は結構、作品に聞きますね。どうしたいのって。どうなりたいのかなって。そうやって問いかけて、見つめたりしてると急に降ってくるんです。以前、ダンサーさんをモデルにして作品を作ったことがあって。そのモデルさんが、五木田さんは「それまですごく苦しんでる感じだったのに、突然バーッて迫ってくるみたいな時間が来る。それが表現なんだと思う。」って言われたんですね。出来上がった作品自体にも価値はあると思うんですけど、作っている時間の中で自分のインスピレーションの波をどう掴んで、どうその波に乗るかが大切だと思います。やっぱりその波を掴めると、自分自身もすごく良い時間を過ごせるし、実際そういう時間を乗り越えた作品のほうが良いものになる確率が高いのかなって思います。こういう感覚の中で作品と向き合っていきたいですね。

 

■先ほどもいくつか作品を拝見させていただきましたが、こういった作品のイメージはどこから生まれるんですか?

何も考えずにこんな感じって思って作れちゃう時もあるんですよ。でも、どんな作品を作る時でも「なんとなく」っていう感覚があって、それを形にしていくのって結構大変で、そういう「なんとなく」がどこから来るのかっていうのはわからないんです。おそらく記憶のかなたとか、たまたま目にしているものとかですかね・・・自分の中のなぞです。

 

■この作品がとても気になります。

この作品は「ワガママほっぺ」っていうシリーズで、作品としてはあまり愛想がないような感じで作っています。人に気を遣わずに、私は私っていうふうに存在できるのっていいなって思って。やっぱり顔が好きなんです。絵を描いて過ごしていた時に、初めは細長い顔の子を描いていたんですけど、そのうちだんだん丸い顔の子がほしいなって思って。そしたら、私の知り合いがすごくこの絵を好きになってくれて。最初は彼女に紙粘土でドールを作ってプレゼントしたんです。けど、それだといつも持ち歩けないし、彼女が旅によく行く子だったので、旅先でつまらない時に取り出して触ったり話しかけたりしても良いようなものはないかなって思って。こんな感じで持ち歩けるような小さいものを布で作ったんです。名前も買った人とかこれをプレゼントする人がつけてくれれば良いなと思っています。似たような顔ですけど、手描きなのでそれぞれちょっとずつ違うんです。ここ2,3年はこの子を一番作ってますね。

 

■これからの目標を教えてください。

メイクの作品は本当のところ、まだ自分がやりたい表現ができていない気がするんですね。だからいつも作品撮りをした後にまだ終わりにできないなって思いが残るんです。それにその時々で作りたい作品が変わるので、今自分が作りたいと思うものに常に正直でありたいなって思うし、その気持ちをちゃんと感じていたいですね。きっと自分の中で変わらない部分もあると思うんですけど、それでもやっぱり自分が求めている作品って違うんですよね。いつになったらこれって言えるようになれるのかなって。上手なものを作る人は美大とか芸大で勉強しているし、私はメイクアップ以外の専門的な知識とか基礎力はほとんどないので。自分の作品には、不器用で荒削りでも、個性や強さがあればいいというか、存在があるものを作れたらいいなと思ってます。

 

 

■最後にメッセージをお願いします。

若い方たちはどんどんやったほうが良いです。それと、やる時はなるべく真剣にやったほうが良いです。適当にやっても適当な答えしか戻ってこないので。やりたいなって思ったものは、「この歳では…」とか「今までそんなことしたことないし」とか「そういう環境に生まれてないし」とかそういうことを言うためにエネルギーを使うなら、やることにエネルギーを使うべきだと思いますよ。

 

 

■プロフィール

五木田亞樹  メイクアップアーティスト

東京生まれ。 キャラクター会社を営む父の影響で多くのキャラクターやイラストに囲まれて育つ。高校卒業後、演劇表現活動をしていたが、30代で、美容家小林照子氏と出会い、メイクアップの世界に入り、美術家でメイクアップアーティストの鈴木寅二啓之氏に師事。その後ヘルニアで寝たきり時間をきっかけに天使、少女の絵を描くようになった。「fromhandメイクアップアカデミー」の専任講師を経てフリーとなる。そして、メイクアップアーティスト大橋絵美とアートプロジェクト「ダリア」結成作品を発表。作品はメイクアップ、紙粘土doll動物の立体作品など。少女を布に描いたcottondollの「ワガママほっぺ」はネットにて販売中。現在はヘアサロン、一般の方向けの授業や舞台ヘアメイクなども担当しながら。自らの作品作りにも取り組み、表現を模索している。

Web Site: http://akigoki.com/